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「非認知能力」ってどんな力のこと?
読者の皆さんは、「非認知能力」もしくは、「非認知スキル」という言葉をきいたことがありますか?「非認知能力」とは、一般的な言葉で表すと、「生きる力」と言われるものです。「生きる力」については、日本の教育でもよく聞かれる言葉ですが、簡単に言う「忍耐力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった人間の気質や性格的な特徴のことを指します。
そして、この「非認知能力」は、もしかするとペーパーテストなどの成績よりも、我が子の人生を左右するかもしれないません。
こちらの記事では、これからの時代を生き抜く子どもたちに不可欠な、「非認知能力」との向き合い方について詳しく解説します!
[ 目次 ]
1.そもそも非認知能力が注目された背景って?
2.非認知能力にはどんなものがあるの?
3.非認知能力を身に付けると、どんないいことがあるの?
4.非認知能力があるってどうしたらわかるの?
5.非認知能力を高めるにはどうしたらいいの?
6. まとめ
1. そもそも非認知能力が注目された背景って?
この非認知能力ですが、元々はアメリカで行われた、「ペリー幼稚園プログラム」という試みから注目されるようになりました。簡単に説明すると、ペリー幼稚園で就学前教育を受けた幼児を40年以上にわたって追跡調査し、プログラムを受けなかった子どもと比較してどのような人生を歩んでいるかを比較したのです。すると驚くべきことに、IQや学力テストの成績は、8歳前後で差がなくなるのにも関わらず、プログラムを受けた子どもたちは、学歴・年収・雇用などの面で大きな効果を上げていることがわかったのです。その大きな効果に、非認知能力の成長が強く関わっていたということだったんですね。
2.非認知能力にはどんなものがあるの?
海外の研究によると、大きく分けて9種類の非認知能力が整理されています。
①自己認識…自分に対する自信がある。自尊心がある。やり抜く力がある。
②意欲…やる気がある。意欲的である。
③忍耐力…忍耐強い、粘り強い、根気がある、気概がある。
④自制心…意志力が強い、精神力がある、自制心がある。
⑤メタ認知ストラテジー…自分の状況を把握する。客観的に判断する。
⑥社会的適正…リーダーシップがある。社会性がある。
⑦回復力と対処能力…すぐに立ち直る。うまく対応する。
⑧創造性…創造性に富む。工夫する。
⑨性格的な特性(ビックファイブ)…神経質、外交的、好奇心が強い、協調性がある、誠実。
ちなみに、これらの非認知能力は、人から学び、獲得されるであることが大きな特徴です。
3.非認知能力を身に付けると、どんなメリットがあるの?
先ほど、「ペリー幼稚園プログラムを受けた子どもたちは、学歴・年収・雇用の面で大きな効果を上げる」と書きましたが、このような効果が報告されています。
例えば、40歳時点でのという経済面や生活面での調査結果を見て見ると、「年間2万ドル以上の収入がある」「雇用されている」割合は、プログラムを受けた子たちの方が高い値を示しています。他にも、「自家用車をもっている」「貯蓄口座を保有している」についても同様の結果でした。加えて「生活保護を受けている」「5回以上逮捕されている」割合は低いことが分かります。
学歴については、「8歳前後でIQや学力テストなどの成績の差は無くなる」と書きましたが、14歳時点での学業達成度、高校卒業者の割合が高いことも特筆すべき点です。学力的な差がなくても、自己認識や意欲、忍耐力、自制心などの非認知能力を身に付けていたことが、日々学習を積み重ねるという地道さや目標に向かって努力するなどの姿勢そのものにプラスに働いた可能性があるからです。
4.非認知能力があるってどうしたらわかるの?
現在、非認知能力そのものを正確に測定する方法は確立されていません。ただ、心の知能指数と呼ばれる「EQ」では、非認知能力に関わるような項目がいくつか設定されていて測定することができますし、やり抜く力と呼ばれる「GRIT」は、12問ほどの質問に答えるだけで簡単に数値化できます。また、はたから見ていても、「好奇心旺盛だな」「忍耐力があるな」「クリエイティブだな」などの印象は、人と接していて感じることがありますよね。このコラムでは、代表的な実験を紹介したいと思います。
【 マシュマロテスト 】
〈内容〉
・186人の4歳児の自制心を計測。
・大人が子どもにマシュマロを差し出す。
・「いつ食べてもいいけれども、大人が部屋に戻ってくるまで我慢できれば、マシュマロを二つ食べられますよ」と伝えて大人が退出。
・いつ戻ってくるかは伝えない。15分後に戻ってくる。
〈結果〉
大人が戻ってくるまで我慢して2つのマシュマロを食べた子どもは、高校生で行われる大学進学適性試験のスコアが高いことが判明した。
いかがでしたか?非認知能力における、「自制心」を身に付けたことが、子どもの成長にプラスに作用していることが伺えますね。
5.非認知能力を高めるにはどうしたらいいの?
現在、認知能力に比べて、非認知能力については、年齢的な障壁が少なく成人後まで高めることが可能な領域も多くあることが分かっています。それでは、非認知能力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。
例えば自制心については、筋肉のように鍛えると良いと言われています。筋肉は、決まった回数とセット数を反復して行います。「背筋を伸ばしなさい」「姿勢を正しなさい」と言われて、それを忠実に守った子どもは成績に良い影響があるという研究もあります。自分を律しながら取り組むという自制心の在り方が、学習にプラスの影響をもたらしたのかもしれません。やり抜く力については、「自分の力は努力によって伸ばすことができる」と考えている子どもは、高まる傾向が強いそうです。何かをやり抜く体験を通じて、自分が成功するイメージに結び付いているのかもしれません。
そう考えると、非認知能力を高めるには、何か特別なことをするということよりも、子どもの一つ一つの体験を大切にするということがカギになりそうです。
例えば、子どもが行う遊びには、非認知能力に関わる要素がたくさんあります。ごっこ遊びを通じて、物を何かに見立てたり、役割を演じて協力したり…。鬼ごっこなどでは、そんなルールあり?と創造的で笑えてくるものまで、子どもって楽しむ力を持っていますよね。
子どもが通う学校や幼稚園、保育園などは集団での生活に基づいて、ルールやマナーを守るように指導されます。そのような環境の中で、友達や先生をはじめとした家族以外の大人と健全に関わることは、まさに、非認知能力を鍛える格好の場とも言えるかもしれません。
また、もしスポーツや音楽、○○教室などの習い事をしている場合は、目標に向かって努力したり、勝敗を受け入れたりする場面そのものが非認知能力を高めていることにつながりますね。
6. まとめ
いかがでしたか?
これからの時代を生きていく子どもたちに、非認知能力がいかに重要な力であるか、ご理解いただけたかと思います。
しかしながら、コロナショックの影響で、日本の社会・教育は大きく様変わりしつつあります。また、多様性の時代において、とにかく非認知能力を磨けばいい、という単純な考え方にも落とし穴があるような気がします。
わが子の健やかな成長を願う親として、これからの世界をニュートラルな視点で見つめ(非認知能力のメタ認知ですね!)、子どもが伸び伸びと活躍できる世の中を創り上げていきたいものです。そして、何より親自身が、進んで非認知能力を発揮する姿を、わが子に示していきたいと思いました。
ライター紹介
[経歴]
元小学校教員に加えて、現在は子育て・教育コンサルタント